住宅ペアローンを組まれる方へ 団信拡充で本人・配偶者の両方の債務免除?!

住宅価格が高騰する中、一部エリアでは不動産取引が減少しているようです。しかし、東京都内は動きがあり、夫婦で住宅ローンを契約する「ペアローン」の利用者が増えています。夫か妻1人では買いにくい高額物件に手が届きやすくなるためです。一方、片方の死亡時に、残された方は自分のローンを払い続ける必要がありましたが、6月からは2人分の債務を免除する新商品が登場しています。今回はどのようなケースで活用が有効であるかについて解説をしたいと思います。

■首都圏でのペアローンの比率は約34%(新築分譲マンション契約の場合)

子どもができて、もしも1人で育てるようなことになれば、収入を維持してローンを払い続けるのは難しいと考える方は多いかと思います。それも希望物件が7000万~8000万円台となると、1人での支払いは厳しいものとなります。住宅ローンを借りた場合の月々の返済額を考えると、夫婦で借りるペアローンなら手が届きそうとなります。しかし、夫に万一のことがあれば子育ての負担は増し、収入は減る可能性が高くなります。簡単にペアローンで住宅購入をする訳にはいきません。

ペアローンとは、一軒の住宅を買う際に夫婦それぞれがローンを契約する方法となります。互いに相手の連帯保証人になるケースが多いです。リクルートの調査によると、2023年の新築マンション契約でローンを使った人のうち、ペアローンの利用率は首都圏が約34%、関西圏が約25%。いずれも2018年の調査開始後、最多の水準だったようです。

■団信契約者の死亡時などに完済されるのは本人・配偶者の両方?!

万が一の際に保険金でローンを完済するため、ペアローンは各自が団体信用生命保険(団信)に加入します。従来は、契約者の死亡時などに完済されるのは本人の債務のみで、配偶者の債務は残りました。新たな団信は、配偶者の債務も一緒に免除するというものです。PayPay銀行がカーディフ生命保険などと組んで提供を始めたほか、りそな銀行が日本生命保険と連携して扱う見通しを発表しています。みずほ銀行も今後、第一生命保険の新商品を販売予定です。

6月1日から契約可能になるPayPay銀行の商品は3つのタイプがあります。詳細は下記のホームページをご確認下さい。

PayPay銀行 住宅ローン(購入・借り換え)

まず本人の死亡や高度障害状態などで、配偶者の債務も含め免除するタイプです。65歳未満が加入でき、保険料としてローン金利に年0.2%を上乗せする。がんと診断された場合(がん特約)や、1年以上の入院で就業不能が続いた場合も2人分の債務を免除するタイプは、51歳未満が加入可能で、金利の上乗せは年0.4%。がん特約などを付け、免除される配偶者の債務を50%にすると、年0.3%の上乗せになるのが3つめのタイプとなります。

■ペアローンの団信と一般の保険商品を必ず比較すること

新たな団信を付けると月々の負担はいくら増えるかを計算すると、夫婦2人で合計6000万円を期間35年、年0.4%の変動金利(元利均等返済)で借りる例でみてみると、一般の団信に上乗せ金利はなく、毎月返済額は合計約15.3万円となります。0.2%の金利を払い2人分の債務を免除する団信を付けると、毎月返済額は約5300円増えます。0.4%を上乗せしてがん特約を付けると月約1万700円の増加となり、利息総額はそれぞれ約222万円と450万円増える計算となります。

しかし、この団信に入る際には、必ず一般の保険商品と比較していただきたいと思います。例えば死亡や高度障害時に、配偶者が毎月一定額を受け取る収入保障保険に夫婦それぞれ加入する場合です。片方の死亡時などは通常の団信で本人の残債がなくなり、収入保障保険の保険金を残された配偶者の債務返済に充てる事ができるようになります。収入保障保険は住宅ローンの債務と同様、時間と共に受け取る保険金総額が減ります。新たな団信に加入しなくても、万一の際に2人分の債務を完済できる可能性が高まります。

新たな団信か、一般の生命保険での対応か、どちらの保険料が安いかは年齢などの条件により変わります。例えば、SOMPOひまわり生命保険の収入保障保険で、配偶者の死亡や高度障害時に35年間、月10万円を受け取る契約をすると、非喫煙者で健康状態の基準を満たす30歳男性なら月2400円程度、女性なら2000円程度で加入可能となります。勤務先の死亡退職金や遺族年金などの公的保障も含め、新たな団信が必要かを検討していただきたいと思います。

40代以上なら、新たな団信が有力になりやすいと判断できます。一般の生命保険では通常、年齢が上がると保険料が高くなり、一方、団信の上乗せ金利は一定の年齢までは差がないためです。高齢になればがん罹患(りかん)リスクも高まるため、がん特約も一案になり、そのような住宅ローン商品を選択肢の一つに組み入れたいと思います。しかし、上乗せ幅が年0.4%になると、ローン金利より高いこともあるので、がん50%特約など、費用対効果を見極めて選ぶ必要があります。ぜひ、今後の参考にお役立て下さい。

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